1-1 アカボシ

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「サムライ殿はお風呂に入られましたか。一ヶ月ぶりですな」 Z氏はいつものように勝手に俺の部屋に上がり込み、お邪魔致します、といういつもの挨拶に続けて言った。 「最近しょっちゅう外で寝転がってるから洗おうかと思って」 俺はフィルターの焼け焦げる匂いがする寸前のマイルドセブンスーパーライトを消しながら答え、サムライに目を向けた。 Z氏がくると必ず近寄っていたずらしようとするサムライも、今は自分の毛を乾かすのに夢中だ。 背中のグレーとは違い雪のように白い腹毛を、ざらざらとした舌で必死に舐めている。 俺は思う。 なぜ猫という生き物は、濡れてるところを舐めるのだろう。 逆効果じゃないか。 人間ならまずそんなことはしない。濡れてるとこ舐めない。 あ、なんかやらしい。 ちょっと待て。 濡れてるとこ舐めると人間も猫レベルということか。 動物ということか。 生物ということか。 クリエイション。
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