一人目の少女

3/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
いつも通っている、登下校の道 この時間、家に帰っても誰もいない もとより母親はいなかった俺が小さい頃に事故で死んだらしい 母親の顔は覚えていない 母親を亡くしたショックだろうか、残された父親は堕落していった 酒に溺れ、ギャンブルでヒマを潰す生活 少年時代の俺は、父親との言い争いにより埋め尽くされた けど、ある事件をきっかけにその関係も変わった 俺に暴力を振るい、怪我を追わせたのだ その日以来、父親は感情を表にださなくなった そして、俺の名を呼び捨てではなく 『龍君』と呼び、言動に他人行儀を感じさせるようになった それは、他人同士になっていく過程だった まるで殻に閉じこもるように 今と、過去の接点を断ち切るように 突き放すなら、まだよかった 傷つけてくれるなら、まだ救われた なのに父親は学校から帰ってきた俺を見つけると、友達が訪れたように喜んで そして、世間話を始める 胸がいたくなって、家に居たくなくて 俺は家を飛び出した だから父親と顔合わせないように、父親の寝る深夜に帰る生活を続けていた 明け方に寝るから、起きるのは昼近く 高校に入ってからは、毎日遅刻だった そんな生活を続けて二年くらいになる それが体に染みついた日常だった
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!