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いつも通っている、登下校の道
この時間、家に帰っても誰もいない
もとより母親はいなかった俺が小さい頃に事故で死んだらしい
母親の顔は覚えていない
母親を亡くしたショックだろうか、残された父親は堕落していった
酒に溺れ、ギャンブルでヒマを潰す生活
少年時代の俺は、父親との言い争いにより埋め尽くされた
けど、ある事件をきっかけにその関係も変わった
俺に暴力を振るい、怪我を追わせたのだ
その日以来、父親は感情を表にださなくなった
そして、俺の名を呼び捨てではなく
『龍君』と呼び、言動に他人行儀を感じさせるようになった
それは、他人同士になっていく過程だった
まるで殻に閉じこもるように
今と、過去の接点を断ち切るように
突き放すなら、まだよかった
傷つけてくれるなら、まだ救われた
なのに父親は学校から帰ってきた俺を見つけると、友達が訪れたように喜んで
そして、世間話を始める
胸がいたくなって、家に居たくなくて
俺は家を飛び出した
だから父親と顔合わせないように、父親の寝る深夜に帰る生活を続けていた
明け方に寝るから、起きるのは昼近く
高校に入ってからは、毎日遅刻だった
そんな生活を続けて二年くらいになる
それが体に染みついた日常だった
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