君へ

2/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 -20XX年2月3日、僕は亡くなった。原因は交通事故だった-  人が死ぬのなんて案外あっけないものなんだね。確か…日本では3秒に1回事故が起きてるらしいね。僕はたまたまその1回に当たり、命まで落とす事になったけど。  普通ならこれでこの世とはサヨナラ…って逝きたいところだけど、1つだけ心残りがあるんだ。それは…そう、君の事…君を遺して僕だけが先に逝ってしまうという事が僕の心残りなんだ。それに…まだサヨナラも言ってないし…。  僕が事故に遭った日、それは僕が君と出会ってからちょうど5回目の誕生日だったね。初めて会ったのも君の誕生日。あの日は雨が降っていて、君は傘もささないで歩いていたよね。そんな僕もびしょ濡れだったけど。あの日からもう5年なんだね。なんだか早いな…  あの日から仲良くなって1ヶ月後の3月14日のホワイトデーに僕から告白して、付き合う事になったんだ。  付き合って初めてのデートって何処だか覚えてるよね?…水族館。もちろん僕も覚えてるよ。君が水族館に行ったことがないって言うから。  朝から君を連れ出した。君が行き先を聞いても秘密、だって喜ばせたかったから。水族館に着いた時、思っていた以上に君は喜んでいたね。いつもは大人な君がその日だけは無邪気な子供みたいにはしゃいじゃって。水槽に張り付いて中々先に進まなかったけど、そんな君を見てるだけでも楽しかったよ。  それから…初めて一緒に過ごしたクリスマス。君はサンタクロースがいるって信じてたね。確かにサンタクロースはいるんだよね。君は小さい頃に自分だけサンタさんからプレゼントを貰ったことがないって言ってたね。だから僕が内緒でサンタさんにお願いして君にプレゼントをしたんだ。朝起きた時、君の喜んだ顔を見て嬉しかったよ。  そして君と初めて会ってからちょうど1年、最初の君の誕生日。僕は普通のケーキじゃつまらないからって、君に内緒で丸くないケーキを頼んだね。君は僕とお祝い事をするのが好きって言ってくれて…僕はなんだか照れ臭かった。  それから…忘れもしない、君と初めてケンカした日。結局いつもケンカした原因は僕にあったんだけど…君はどんなに怒っても僕の事を嫌いになる事がなかったよね。そんな僕も君の事を嫌いになる事がなかったけどね。でも、君が怒った時はホントに恐かったな…今では笑い話…ってワケにもいかないけどね。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!