残業の夜

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  言った俺に、意外そうなリアクションが返ってくる。 「何ですか?そのカオ」 「……そこだけは、誠実なのね?」 「そこだけ、って」 まぁ。 誠実か。と聞かれて、即答出来る訳でもないからいーけど。 「今の、セーフですよね?」 「ギリギリね」 慣れてしまった距離の、副作用。 つい先刻。 やっぱり尊敬できる先輩だと再認識したばかりなのに。 「危ねぇ」 「してたら、セクハラになるわね?今の」 「……勘弁」 クスクスと笑うけど。 この人、本当、恋人ごっこしてようがしてなかろうが、抵抗しねぇし。 「先輩も、抵抗して下さいよ」 「……誰の所為よ?」 「そこは俺も悪かったですけど、先輩も抵抗しなきゃダメですって」 やっばいな。 今の、完全に無意識だった、俺。 恋人ごっこもしてない、酒も入ってない、しかも彼女が居る状況だってのに。 本当、危ねぇ。 「次は抵抗して下さいね?」 「次はあっちゃダメでしょ?」 「そーですけど。もしあったら!」 今の彼女には、……指一本触れてもいないのに。 [次へ]
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