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『もしもし?』
「面倒じゃない?」
『毎回言われりゃ鬱陶しいですけど、ソレが彼女の唯一のワガママならきいてあげるのがオトコでしょ?』
「そーゆーモンか?」
吹雪だよ?
もう、日付変わってる時間だよー?
もうすぐ、確実に除雪車が入る時間よ??
『それに、好きな相手に逢いたい。とか言われたら、悪い気はしないじゃないですか?』
「でも、吹雪はちょっとねぇ?」
悪い気は、まぁ、しないだろーけど。吹雪に外出ちゃダメよ。うん。
除雪車入ってる時間はもっとダメよ。危険危険。
『……いつか買えるといいですね?可愛げ』
「ちょっ、可愛げって!!もしかして、本当にめちゃめちゃ好きな人が出来たら、私だって吹雪でも逢いに行くかもしれないでしょ!」
『そーですか?』
や、だって、ねぇ?
今はほら!好きな人が居ないから、リアルになんて考えられないし、さ。
ついでに、現実問題、もう終電終わってるしね?
「…………た、ぶん」
『じゃあ、先輩?俺が、今すぐ来て。って言ったら、どーします?』
は??
相模が、今すぐ来て。
と言ったら?
相模が??
「何か、緊急事態でもあった?」
『……風邪をひいたらしくて、ですね?』
「は??」
『動けない程度に辛いんですけど、……腹減ったんです、よね?』
…………、先に言えよ!そーゆー事はっっ!!
『もしもし?先輩??』
「20分で行くから、待ってなさい!!」
『……はい』
通話を切ると同時に起き上がって、
うん。この時の私の動きの素早さは、本当に拍手モンだったと思う。
* * *
ピンポーン。
相模家のチャイムを押したのは、通話を切ってジャスト20分後。
着替えて、手当たり次第に薬やら食べ物を鞄に詰め込んで、全力疾走。
こんな夜中に全力疾走!
吹雪に負けずに、全力疾走!!
全身真っ白の動く雪だるま状態になりつつ、全力疾走!!!
どーせなら、好きなオトコの為に走りたいモンだ。
「……せんぱい」
「うわぁー」
結構な時間をかけて開いたドアから姿を見せたのは、思いっきり病人の相模。
「大丈夫?」
「……腹減ったし、ダルイ」
「っ、」
言いながら、私に向かって倒れこんでくるから、慌てて支えるけど、
重いっっっ!!!
うわぁーん、体格差考えてぇぇ!
ついでに、雪まみれだからぁぁぁぁ!!私っ!
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