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「煉骨の兄貴、今日素麺食いてぇ」
「素麺?」
「七夕は素麺食わなきゃいけねぇんだって」
「テレビで言っていたか」
「うん」
蛇骨がテレビに感化されて夕飯のリクエストをしてきた。
煉骨は思案した。
素麺なら簡単でいいか。
湯がくのに手を取られるが…
「なら、早めに帰って手伝え。量がいるからな」
「お~!」と素直な返事を聞きながら、後は天ぷらでも買ってくるか、と煉骨は献立を巡らせた。
その夕刻。
蛇骨が汗だくになって大量の素麺を湯がいているところに、蛮骨が学校から帰宅した。
「おっ素麺か。ご苦労さんだな、蛇骨」
「あっ大兄貴、お帰り💓…なにそれ、どうしたんだよ?」
蛇骨の不思議そうな視線を受けて、蛮骨は手首を揺らした。
さらさら、と涼やかな音がキッチンに広がる。
「あぁ、商店街でもらってな。飾ろうぜ」
蛇骨の笑顔が輝きを増した。
「もうちっとで茹で上がるから!あっ大兄貴、氷出してっ」
いそいそと仕上げようと懸命な姿に蛮骨は目元を綻ばせた。
「七夕飾りだと?」
煉骨はノートから顔を上げた。
「折り紙などこの家にあるわけねぇだろう。第一、そんな使い切らねぇものに金は出さんからな」
煉骨は包装紙をいくつか棚から取り出した。
「これを使ってしまえ」
「んもぅ…煉骨の兄貴はほんっとしみったれだな~」
蛇骨はたんこぶももらい、蛮骨の許に引き返してきた。
「上等じゃねぇか、それで」
蛮骨にたんこぶを撫でてもらい、蛇骨は機嫌を直して包装紙にハサミを入れ始めた。
ちょきちょきちょきちょき、ちょきちょきちょきちょきちょっきん。
兄貴、糊取って。
ぬりぬりぬりぬり、ぬりぬりぬりぬりぬ…あ、はみだしちった。
二人の楽しげな様子に銀骨と凶骨が加わり、庭木に笹竹を取り付けた。
霧骨が自分の短冊だけを書き、吊していった。
蛇骨は願いごとを書いた短冊を蛮骨に破り捨てられ、否応なく一言一句、蛮骨の言う通りに書かされた。
蛮骨はご褒美に一緒に風呂に入り、蛇骨の体を余すところなく、可愛がってやった。
蛇骨はお風呂中にあんあん泣き声を響かせた。
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