何処かの夏

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[何処かの夏] (1987;7/16 Fri.) 海を抜けてゆく風が 私の心を洗ってゆく 洗いざらしの心よ 太陽にさらされて 白く白くなれ 二度とは戻らない 魂の おののき 死ぬまで忘れることのない 金色の小さな鐘の音が 私のなか一杯に 鳴り響いたとき 静かな慈愛に充ちた瞳で じっと私を見つめていた 清潔な少年は 彼のこころの脆弱さゆえ 両手を広げて 鳥を逃がした 無数の青い色が 空一面 海一面に 渦を巻き 流れ 凝縮し 華やかに移ろっていった 至高の一瞬は 私の體を天にまで舞い上げ そうして 永遠の記憶を 熱く刻印した 海を抜けてゆく風が 私の心をさらってゆく 光のなかを走りぬけたこころよ 風を含んだ帆のように 白く白くなれ
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