眩暈(めまい)

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
[眩暈] (1992;9/6 SUN.) 雲はゆっくり 流れてゆくけれど 幾千の まばゆいばかりの 光の粒に飾られて 風はさやかに 吹きぬけるけれど 夏の終りの感傷を 拭ってゆくように ?今年の夏はどんな夏? 今年の夏の名残の風は 耳元に そう囁いて ゆきすぎる けれど ほら いくらこの手をのばしても こんなに大きく精一杯に 腕を開いても つかめない どんなにかこのまま この瞬間を 此処にとどめておきたいと願っても 抱きしめれば 抱きしめるほど すりぬけてゆく 逃げてゆく そうして 取り残された心には 針の先ででも つついたような 見えるか見えないかというほどの かすかなかすかな穴があく こころにあいた かすかな穴を 風が吹きぬけ 甲高い笛を鳴らすんだ すると こころは 黙ったままで やっぱり涙を流すんだ
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!