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暗い夜道を、月灯りだけを頼りに、家路への道を急ぐ。
しばらく進むと、何時の間にか場の空気が変わっていることに気付く。
何時でも抜けるようにと、懐にある護身用の小刀へと触れる。注意深く、辺りを見回すと、深い闇の中一人の少女に、出会った。
その瞳はとても、苦しげで、寂しげで、それでいながら、とても強く---。
いつのまにか、先程の警戒心も忘れるほどに、彼女に強く惹かれていた。
どれほどの時がたったのだろう。もしかすると、一瞬だったのかも、しれない。
ふと、気付けば、少女が私に近づき微笑んでいた。
「初めまして。こんばんわ」
私もつられて微笑んだ。
「初めまして、可愛いお嬢さん」
すると彼女は少し寂げな微笑みを浮かべ---
「そして、さようなら」
---それが、彼女が私に向けた最後の言葉。
そしてそれが私が、誰かと交わした最後の言葉。
次の瞬間、月の光を浴びた冷たい刄が、私に向かい、振り下ろされた。
最後の瞬間、彼女は確かに微笑んでいた。
哀しげに、苦しげに、それでいて両の瞳に強い光を宿しながら---
そして、それが私の見た彼女の最後の----
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