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「おじさんみたいでしょ?だけどね、好きな人が持ってきてくれるものだと思ったら、どうしても愛おしく感じちゃうんだよ」
すべての面をめくり、新聞をとじると、ゆっくり表面をなでながら言う。
「いつから気になったんだっけ……もう、思い出せないけど。毎日挨拶を交わすのが、楽しみで仕方がなかった。今日もがんばろうって思えた」
それは、僕も同じだった。
このご時勢で近所の人とも挨拶を交わすことが少なくなっている中で、初めて出会ったときの、ゆきの爽やかでやわらかい挨拶に、僕は心引かれたのだった。
単なる挨拶だと思うかもしれない。
恋に発展するには、ドラマチックさに欠けるかもしれない。
けれど、僕はその挨拶を毎朝聞けるだけで幸せな気持ちになれたし、ゆきのやわらかい笑顔を見れただけで、甘い感情で呼吸ができないくらい、嬉しくなったのだった。
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