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―三年後―
散り行く桃色の花を眺めながら、酒やら食べ物やらで盛り上がるこの季節。
学年が変わったり、通う学校が変わったりと、出逢いと別れの絶えない年明けから四つ目の月。
三年前から一人暮らしをしているアパートから、徒歩五分の所にある光陵高校の二年生に俺は属していた。
桜の花から滴る雨水。まるで空が喚き、泣いてるかのような大雨の放課後。
「な、中原先輩!!」
その背後から聞こえた女性の声は、明らかに緊張していると手に取るように分かる。
振り向くとそこには一年生の学年カラーの真っ赤な色のリボンをつけている小さめの黒髪少女。
目は大きく肌もツヤがあり、色白で綺麗で男から人気の有りそうな容姿をしている。
「何?」
ここは校門前で、しかも大雨だったから早く帰りたいのにという感情が口調を少し冷まさせる。
一方、頬をリンゴの様に染めながら、『香川』と書かれた名札をつけている少女はうつ向きながらモジモジしている。
何をしたいのかはバカでも分かる。
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