序章

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男は、ゆっくりと塵一つない真っ直ぐな廊下を目的の部屋まで歩いていく。 外はまだ明るいはずだが、機密性の高い職場の常で窓には全てブラインドが下ろされている。 照明はついているが、出力の低いLEDの為、薄暗い。 男は無人で動く兵器の開発をしている物理学者だ。 この男による全く新しいコンセプトで設計されたそれは、短期間で集中的に敵を殺す事を目的としている。 無人兵器……戦争における人道的配慮……これ程矛盾した単語が並ぶ事はそうないが、人同士の殺しあいを避ける為に何年も前から製造が計画されていた。 だが、現状の人工知能の技術レベルでは無人での戦闘行為は難しい…そこで、男は発想を逆転させる。 戦闘行為が可能となる程の人工知能の存在を待つのではなく、現在の人工知能でも活動可能な兵器を積んだ無人兵器の開発を行えばよいのだ。
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