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早朝。胸がざわついて、家にいても心が杏子を探している。杏子はさなえの実家の旅館に泊まっている。年上の彼氏と一緒に…。朝焼けが萌える海辺を歩きながら、俺は何度となく溜め息をついていると、前から杏子が歩いて来た。俺は驚いて杏子を見つめると、杏子も俺に気がついて立ち止まり、バツが悪そうにクルリと背中を向けて逃げようとすると、俺はたまらずに、
「キョウ!!」
と力いっぱい叫んだ。杏子の背中は泣いているように見えて、俺は思わず杏子を追い掛けた。行くな。行くなよ。何処にも行くな。そばにいろよ。誰にも渡したくないんだ!!
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