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…勘違いしそう。
困惑している私を見つめている瞳は、意地悪な言葉とは裏腹にひどく優しい。
キスとはまた違った気分に酔っているのかもしれない。
相変わらず抱きしめられたままだが、滝澤の手が…愛おしむように頬から耳にかけて何度も行き来する。
滑り込むように手が耳に触れる時、軽い刺激が走り更に困惑する。
いつまでも百面相がつづく
理由だ。
「…そんな顔したら…止められないな。初めからこのままの俺でいけば良かった。そしたら…元基なんかに抱きしめられることなかったんだ」
ぽぅっとした状態で言ってることが良く分からない。
聞き出すつもりで滝澤を見上げるとそのまま、再び抱きしめられた。
「だから、そんな熱っぽい目で見るな…もう、分かるだろ」
そう言った後、耳に唇を押し当て熱い吐息と共にはっきりと言った。
「好きだ」
パチンッ
震える手で
力無く滝澤の頬を叩いた。
反射的に動いてしまっていた。
痛みは無かったと思うが、告白の後に叩いたから滝澤が驚いた顔をして私を見ている。
「……嘘」
「人の告白を嘘とか言うな。信じられない?…信じるまで、抱きしめてキスしようか」
返事をするかわりに、頭を振って『嫌』と伝える。
素直に受け止められない。
こんなに都合のいい話、簡単に信じられるわけないじゃない。
誰に言っても信じないよ?
夢物語だ。
だって、相手が私なんだよ?
ずっと友達もいなし、可愛くない…なにより、友達がいる自分にやっと慣れてきた所だったのに。
…自信がないんだよ。
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