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彼女の勘はハズレていた。
部屋の中に兄の姿はなかったから。
その事に胸をそっと撫でおろした。
開け放たれた玄関前に立つ管理人のおじさんは、不安そうな様子で部屋の中を伺っている。
先程彼女はすぐ親に連絡を入れた。
(自殺してるのかもっ!)
それを思い付き、不安に刈られた彼女は、すぐさま親に管理人の連絡先を聞いた。
親との電話を切ると、管理人に連絡し、すぐに来てもらった。
親にはただ部屋を確認したいからと、変な気遣いをさせない為のウソをついた。
管理人には状況の全てと、そこに自身の考えも交えて話し、部屋を確認する為に、鍵を持ってきてもらう。
その際に警察を呼ぶかと提案されたが、まずは確認してからと、やんわり断った。
身分証を確認した管理人は、念の為立ち会うという。
震える手を抑え、部屋の鍵を開ける女。
ドアノブを湿らせる手汗、緊張しながら開かれた部屋に入り、恐る恐る確認するも、兄の姿は影も形もなかった。
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