終章 風と共に

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「さて、そろそろ私は帰るわ。“執行会”で”校外学習”の警備の打ち合わせがあるから」 「もうそんな時期ですか」 夏の一大行事“校外学習”。三泊四日で他国の企業や研究期間の視察に行くというものだ。今年の行き先は北国の“帝都”だ。 参加するのは二年だが、“執行会”の人たちは護衛として同行する決まりになっている。うちの学園は各国の皇族や有力貴族の子女、はたまた希少属性の保有者が在籍しているため、学外では誘拐や暗殺の危険を伴う事が多々あるのだ。 「忙しいのにお時間を取らせてすみませんでした」 「いいのよ、私が勝手にやった事だもの。それじゃあ、失礼するわね」 レイシャ先輩が鞄を手に部屋を出ようとすると、入口の扉が叩かれた。 「看護師さんかしら?」 「あれ、まだ検査の時間じゃないはずなんですが……はーい、どうぞー!」 俺がそう呼び掛けると、扉がゆっくりと開かれた。そして、その意外過ぎる訪問者に俺は絶句した。
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