兄の帰国

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兄の帰国

いつものごとく、竜胆と帰る。 「香月、借りたいCD取りに来る?」 「じゃ寄ってこーかな」 竜胆んちに着くと、赤いポルシェが停まってる。 まさか…!? 竜胆と顔を見合わせ、家に慌てて入る。 「兄貴!」「菖蒲兄ちゃん!」 「りっちゃん、香月おかえりー」 菖蒲兄ちゃんは竜胆の兄貴で、俺らより10個上で、いつも落ち着いててカッコイイ。 福山雅治に眼鏡かけた感じ。 「暫く会わないうちにりっちゃんまた背伸びた?」 「やっと180㎝だけど兄貴には敵わないよ」 「香月は…可愛いままだな」 「俺だって伸びてるし!」 「兄貴、今日はどこからの帰国?」 「花の都、ロンドンです」 「いーなー!俺パスポートすらねーもん」 兄ちゃんは海外で建築設計をやってるので、ほとんど向こうに行ったっきりだ。 「お前らにお土産っ!りっちゃんにはGUCCIの定期入れ。香月はD&Gのキャップ」 「これ…俺が香月にあげた誕生日プレゼントと同じなんですけど…」 「兄弟は似るって言うだろ。特にりっちゃんと俺は思考が似てんだって」 兄ちゃんは凄い竜胆に優しい。 その時、玄関で声がした。 「おばさーん!煮物持ってきたよー!」 「あれ?香鈴。」 「お兄ちゃん!…にあれはまさか。」 香鈴がキッと睨む。 「久しぶり…香鈴」 何故か香鈴は、昔から菖蒲兄ちゃんに敵対心を燃やしてる。 「香鈴にもお土産があるよ」 「それより設計した図面見せてよ」 香鈴は兄ちゃんの描く建物がホントは大好きなんだ。 兄ちゃんは大人だから、勿論分かってるけど。 その日は竜胆のおばさんがご馳走を作ってくれて、竜胆と菖蒲兄ちゃん、俺、香鈴、みんなで食べた。 「もう帰っちゃうの?」 「明日本社行って、夜の便が発つから」 「また来てね」 皆で兄ちゃんを見送る。 「りっちゃん」 兄ちゃんが竜胆に耳打ちする。 「あんま香月を泣かしちゃだめだぞ。大事にな」 「兄ちゃん!」 聞こえてた俺も真っ赤になる。 家族公認で付き合ってる俺らは情報だだ漏れだ。
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