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今日も空は丸く突き抜けている。
『旅立ち』の今日を迎えて少し誇らしくもあり、照れくさくもある。
「じゃあ今までありがとう」
「気を…つけて」
母は泣いていた。
この時期そこらの家庭でもよく目にする光景。
俺は今日『ノエル』を出る。
人口の激減に伴い、都市を高い壁で覆った。
他の土地が必要ないから。
人が生きていく為の物は全て壁の内側である『ノエル』にあった。
壁の外に出て行くのは…少しづつ、しかし着実に増えてきた人口の居住区を広げる為だ。
仕事もある。
賃金も手に入る。
ノエルではそもそも働くという概念が薄い。
過剰な政府の保護下にあり、人はただ増え続ける事が美徳とされていた。
そんな現状を危機だと政府が認識しているのかいないのか…
人間を選抜し壁の外に出し開拓する事にしたのはもう40年前にもなるそうだ。
俺たちは政府がどこにあるのかも知らされていない。
そんな疑問すら持つ事を辞めてしまう程にノエルは快適な居住区だった。
ちなみに俺は選抜されたワケではない。
「君が初の志願者だ」そうだ。
有り余る時間を読書にあてていた俺は、過去の文明に魅せられていたのだ。
毎朝仕事に行き、バカだ間抜けだと言われながらもライバル達と切磋琢磨しつつ自分を成長させる。
スバラシクね?
「ちゃんと手紙書くんだよ」
母は俺のそんな希望に最初は反対したが…
なにせ子沢山なので(ノエルでは『父』はいない。婚姻制度はとっくに廃止され、中絶も禁止だ。故に…あまり想像したくはないが…ヤリマクリなんだろう)
俺一人くらいは『外』を知るのもいいだろうと認めてくれた。
「わかったよ。母さんも元気で」
養育する為に必要な物資は全て政府が用意してくれる。
何も考えなくても…
何もしなくても…
ココでは誰かに咎められる理由はない。
そこが堪らなくイヤだった。
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