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「……勇者様じゃなくて、実は私のストーカー、とか?」
「自分で勇者呼ばわりしといて、ストーカーはないだろう……」
……だから、この世界には多分、レタエや死神タナトス、生き返ったイレイサーシックス達がまだ生きている。
ディケルは大学で教授と〈古代エスタニア文明〉について研究しているし、ムツキは正体を隠したまま連邦本部の諜報部員として働いているはずだ。
……メルルーレに至っては、家族とともによからぬことをしているに違いない。
「だって、私は君のことをよく知らないのに、君は私のこと、よく分かっていそうなんだもの。なんだか、ズルい」
俺が今いる時間、空間は俺達が旅した時間軸とは違う、新たな未来なんだ……。
「ズルいって……俺の姿、覚えてたんだろ? それは充分、相手を知っているってことじゃないのか?」
……それで、フィオは俺のことを知っていたんだ。
この世界、この時代には、俺が仲間達と旅路に刻んできた思い出なんか、ないけれど……フィオがいる。
「違うよ。私は君のこと、知らないの」
彼女は強い口調で否定するが、目が笑っている。
フィオがいる場所……それが俺の〈在るべき場所〉だってんだろ?
クリック……。
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