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廃Ж人Ж狼
温かい光が溢れる図書室。騒ぎ立てる者があまり来ない、ゆったりとした場所。
その図書室で、ステンドグラスの前に座り、医学書を黙々と読み進める人がいた。
午後の光に照らされるのは、紅緋色の短髪。医学書を眺めるのは細められた真紅の瞳。
それを遠くから、灰色の硝子玉が眺めていた。
真っ白い手が持っていた飴が床に落ち、音を立てて砕ける。
少し大きく開かれた真紅の瞳が捉えたのは、生成り色の異様に長い髪だけだった。
きっと、いつもの事だ。本当の事を、今の人も知らないんだ。
知っていたら、何も砕けないんだから。
知らないなら、教えない。絶対に、教えない。
だから、誰も……。
砕けた飴は、戻らない――。
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