エルセルム

38/39
139928人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「しかし地上の者が古代の石盤を起動させてここに来るなんて、にわかには信じがたいですね。一体誰に遣わされたのです?」 「いや、別に誰かに命令されたとかじゃないんだけど。 でもさ、天空と地上は関係を断っているはずなんだよな? なのに、俺たちはある人物からこの天空に来る魔法陣を知ったんだ。 関係が断たれてるはずなのに、なんでその方法が出回ってるんだよ」 「きっと、どこかでひっそりと神話が語り継がれていたのでしょう。 そして時を経て、こうして真実にたどり着く者が出てきた」 啓祐は考える。 (教祖はどこかで遺物的な伝承を見つけ、それを記憶した。 そしてそのメモかなんかの一部がミレン地方の闇市に流れて、俺たちが手に入れた) ここで天宮が一歩前に出る。 「一つ良いかしら? さっきあなたが言っていた、エルセルムの秘宝っていうのは?」 「それは教えられません」 当然、それを護る者としては教えられないだろう。それでも天宮と城島は引き下がらない。 「形のあるものなのか? それとも抽象的なものなのか?」 「形のあるものです」 天宮と城島は顔を見合わせ、頷く。その秘宝の中に自分たちが探し求めるもの、キーアイテムがあると読んだ。 啓祐はそんな二人の様子から何かを察した。 「あのさ、しばらくエルセルムに滞在したいんだけど、大丈夫か?」 それにはジュリアが答える。 「うむ。良いだろう。むしろしばらくは滞在してもらいたいと思っていたところだ。自由に地上と行き来されては、変に目立つ可能性があるからな。 ただし、監視はつけさせてもらう」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!