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「秀満殿が?」
門衛からの言伝を聞いた濃は驚いた。
同時に怪我の癒えた可成が濃に尋ねる。
「明智秀満?光秀殿の家の者ですかな?」
「えぇ、光秀殿の婿殿です。可成殿が亡き後ですので存ぜぬかと」
濃の胸が大きく鼓動を打つ。
信長を、信忠を、そして濃自身を討った光秀の重臣が訪ねてきたのだ。
「……ならば、謀叛人ですな」
可成はどうする?といった顔を濃に向けた。その手にはすでに刀が握られている。
「よろしい。何か魂胆があるにせよ、私にも伺いたいことがあります。お呼びなさい」
濃はそう伝えると、すぐ可成をむき、
「不審な動きをしたら切り捨てて構いませぬ」
と、言い放った。
妖艶な濃の目が鋭く冷たい光を放つ。
隙あらば夫である信長を殺そうとしていた、若き頃の目であった。
「……はっ」
その冷たい威圧感は信長のそれにも通じ、歴戦の可成の背筋をも寒からしむほどであった。
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