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目の前に広がるのは、どこか見たことのある天井。
ルナはまるで霞みかかった視線を晴らすようにゆっくりと目を擦ると、真上から大分見慣れてきた顔が覗いてきた。
「ルナちゃん、おはよう。
いい夢は見れたかい?」
「モールス……」
いまいちまだはっきりしない頭をかきながらルナは上半身を起き上がらせ、キョロキョロと辺りを見渡す。
壁には一面の肖像画。
窓から見える空に、赤い稲妻が走る。
まぎれもなく、現代の魔界だ。
「ケヴィンは……」
「ここにいますよ。」
モールスの手を借りて立ち上がりながらルナが言えば、間髪入れずに背後から声がかかる。
その声に導かれるように振り返ると、そこには淡い笑みを浮かべたケヴィンが床に胡座をかいて座っていた。
「よっ、お疲れさん。」
「どうも……それより、悪いんですけど手を貸してもらえませんか?」
気軽に手を挙げて声をかけたモールスにケヴィンは苦笑を零し、懇願するように両手を合わせた。
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