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「……あっ、ごめん」
啓司くんは一旦コーヒーをテーブルに置いて、携帯に手を伸ばす。
しばらく携帯の小さな画面を食い入るように見つめた後、啓司くんは慣れた手つきでメールを打ち始めた。
意識は全て携帯に集中されていて、まるで私なんか見えていない。
こんなに近くにいるのに、この時だけは、私と啓司くんの間に、巨大な見えない壁ができるんだ……。
啓司くんは長い息を1つ吐くと、再び携帯をテーブルに置いた。
きっと返信し終えたんだろうな。
私は啓司くんの携帯を、じとりと睨みつける。
胸に限りなく積もっていく、自分勝手なモヤモヤ。
やだ……。
やだよ……。
メールなんて無視してよ。
ねえ……私と2人でいる時に、どうして他の女の子のこと考えるの……?
また、携帯が鳴った。
また、啓司くんの手が携帯に伸びる。
……やだ。
心の中のイライラを、無理やりねじ伏せようとして、私は潰れんばかりに、きつく目を閉じた。
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