第三土曜日の覇王

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 ブオーーン! 一台のバイクがパトカーを左側から抜き去った。それはパトカーのサイドミラーをかすめ、封鎖された道路を真っ直ぐ突き抜けていく。 「これって南帝?」 「いや、特攻服(カラー)が違う。それ以上に数が違う。あそこはこんなに所帯はなかった」  気づけば街はその黒い族に埋め尽くされていた。悠然と対向車線を疾駆する者、縫うように本線を練り往く者。歩道に飛び出して人々を避けるように突っ走る者もある。乱反射するヘッドライトの眩しい輝き、鼓舞するようになり続くエキゾーストの音。その様はまるで天に飛翔する巨体な龍の如く。 「とにかく南帝なんてちんけなチームじゃない」 「だったらジュピター、いやケルベロス。とにかくこの数はあり得ない」  さすがにこうなると、警官達も迂闊(うかつ)には動けない。動物王国(サファリパーク)に迷い混んだかのようにパトカーの中から様子を窺うしか術はなかった。
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