序章

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「数年前まではやってたらしいけど、なんでも何人もの人が殺されてそれ以来やる奴がいなくなったらしいぜっ」  カストは上司の神父に聞いたある噂を思い出した。それと関係があるのか、真実かどうかも判らないが語り継がれているのならばと思い、イリスに話してみた。 「此処で?人が殺されたのか?この聖堂の中で悪魔なんか入れないだろ?」  すると、イリスは驚いたように次々とカストに問い掛ける。 確証が無いうえに一番清められている聖堂に邪悪な悪魔が立ち入ることが出来ないはずだ。 首から下げているロザリオを片手で握り、黙り込んだ。 「落ち着けよ…俺もあんまし信じてねぇし、そんな悪魔がいたら俺が倒してやるぜ!今日はもう終わりだし、部屋に帰って寝ちまえよっ」  あまりの問いにカストは困ったようにイリスを落ち着かせると、今日は早めに切り上げて部屋に戻ろうと思い、イリスと共に書庫から出た。 … …あと一人を食らえば… …に戻れる… 「はぁ…疲れた…」 部屋に戻ったイリスは、暗闇の中で電気の明かりを付けようと思い、スイッチ探して壁に手を這わせて、見つけたスイッチをカチッと入れた。 「こんなとこにいたのか…探したぞっ」  イリスの部屋はそんなに広くないが、狭いベッドや棚、木製の机と椅子からシャワーまでは最低限で設置されている。 明るくなった部屋から聞き慣れた声が聞こえた。 部屋を見渡してみると、ベッドに腰掛けた大柄な男がいた。 光に反射する金の糸のような長髪と美形とも言える美貌に体格の良い長身。闇を統べる偉大な魔王といえる。
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