出逢い

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夕方の帰省ラッシュで電車は満員。混雑する人混みで、かったるいはずなのに、倖宏の表情は、にやけていた。 「―――倖…  お前、かなり顔にやけてるんだけど…  この人混みで、にやけてたら、かなり怪しいって」 倖宏の隣でダルそうに吊り輪にもたれ掛かっていた智貴が、呆れた顔を見せる。 「ははっ…」 智貴に悟られては、話がややこしくなると悟った倖宏は笑って誤魔化そうとした。しかし、長年の勘は怖いもので、感づいた智貴は、笑いながら辺りを見渡し始めた。その行動に倖宏は戸惑いを感じる。 「今まで恋愛しても本気になれなくて泣かせてばかりいたくせに、にやけるくらい嬉しくさせてる女どいつ?」 ニヤニヤしながら倖宏の顔を覗き込んでくる。逃げ場がなくなった倖宏は、軽くため息をつき、 「手前の西高3人組の真ん中の子…  ってか、頼むから何もするなよ?」 智貴の腕を掴み念を押す。しかし、智貴は不気味な笑みを見せ、倖宏から視線を逸らした。 “次は~西坂~、西坂に止まりま~す”
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