ログイン

3/32
5239人が本棚に入れています
本棚に追加
/400ページ
陽は後ろから聞こえる声を友人の(たちばな)ヒロだと気付き、振り返ると同時に笑いながら多少の嫌味をかける。 その様子から彼らの仲の良さが伺えた。 (たちばな)ヒロは陽の高校の同級生であり、そして幼なじみでもある。 身長は175センチ。 髪は長く、光沢がかった茶。 通った鼻筋に、(つや)やかな瞳。 その容姿からはゲームなどする雰囲気を感じさせなかった。 だが彼はゲーム情報に深く精通し、その知識は一般よりも遥かに勝っていた。 「俺の竜、俺に敵対心(てきたいしん)()き出しなのだが……」 冗談と取れる発言だが、足元で彼の足を噛みついている子竜を見ると冗談とも言えない。 「それもなついてるって事なんじゃないの?」 陽は微笑を浮かべた。 「そうだといいが……。それにしてもここはゲームの世界と思えないくらいリアルだな」 ヒロは周りを見渡した。 その目に見える全てがデータであり架空の世界。 風で草花が揺れる音も、遠くで(さえ)ずる鳥たちの声も、彼らには全て感じとれていた。 だが彼らはまだ、この世界に慣れていないようだ。 数時間前に初めてこの世界に来たのだから無理もない話だ。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!