Secret.00 プロローグ

1/13
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

Secret.00 プロローグ

      「なぁ」 夜闇に生まれたのは男の声。 その声を向けられた灰色のコートを着た少女は、無礼にも男の目を見はしない。 「良かったのか? クラスメイト、だったんだろ?」 しかし男は構わず話を続ける。 それでも少女は無視を通し、コートの中から紙袋を取り出して中身を開いている。 時間が過ぎる。風が流れる。 立ち尽くす男。座っている少女。 二人はそれから何も言葉を交わしていない。 呆れた男が帰ろうと着ていたコートを翻した時、ようやく少女は口を開いた。 「いいよ。だって、うちには関係ない」 そうとだけ言って、紙袋の中身であったパンをくわえて立ち上がった。 民家の屋根の上のこと。  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!