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達也は心に深い傷を負っていた。
父である正人は行方不明になり、母のは"ある事件"により、この世を去ってしまい一人だったからだ。
その後心を閉ざしてしまい、ほとんど話すことが出来なくなった。それがつい最近の話である。
達也は見捨てられていた。誰も彼を助けようとはしなかった。
そんなある日、達也が部屋で転がっていると、チャイムが鳴った。
「……はい」
無気力状態の達也は気の抜けた返事を返して、扉を開けた。
そこには一人の男が立っていた。
「どうも、初めまして。俺の名は影山蒼明だ。
隣に越して来たんだ、よろしく頼むよ」
見た目は達也よりも少し年をとっている程度だろう。
二十歳前後だろうか。明るそうな男だ。
「ええ、よろしくお願いします……すみませんが、失礼します。
いろいろありますので……」
そう言うと、達也は扉を閉めた。
「……やはりか」
蒼明がポケットから何かを取り出した。
小型テレビのようなそれのスイッチを入れる。
すると、
「どうした? 影山」
その画面にある男の姿が写し出された。
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