始まりの慟哭

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始まりの慟哭

どうやら管理人の様だ。 管理人は、俺達をいちべつすると、シッシッと言う風に退けと合図する。 俺は青森をかばう様な格好で道を開けた。 青森は相変わらず俺の裾を掴んだままだ。 管理人は実務的な動きで扉の鍵を開けた。 「どうも」 阿見好はタバコを踏み消すと管理人にいちべつする。 開け放たれた扉を掴みもたれかかった。 「どうぞ」 もじゃもじゃ頭は俺達を扉の向こうにうながした。 管理人はうっとおしそうに俺達を睨む。 当の阿見好は気にした様子もない。 俺は青森の手を引いて部屋に入った。 中は薄暗く人の気配は全くしない。 湿気に満ちた部屋の空気は重く、今にも押し潰されてしまいそうだ。 「先生」 一応、声をかけるが、部屋の中は静まりかえっていた。 奥の部屋まで行くが、誰もいない。 ただ散らかった部屋は、人が生活してるであろう痕跡を残していた。 「どうした、なんかあったか?」 玄関からぼさぼさ頭の声がした。
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