第二章 禍津日

5/11
34508人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
独り言の様に呟く。 邪妖狼はそれを首を縦に振って肯定した。 《その概念を知るなら、卿のしている事は世界を狂わす奇行だと分かるはずだ。過剰な死を撒き散らす存在は自然の摂理を、生態系を、星霊の命すら縮ませる事に繋がる》 「今の俺は世界から外れている……と言いたいのか?」 邪妖狼は首を横に振って否定した。 慈しむような、哀しむような瞳でガルンを見つめる。 《卿だけではない。他にもそのような世界のネクローシスは存在する。その中でも人間と言う種自体が持つ業は異常だ。趣味嗜好の為に世界を、生態系を、自然を破壊していく……》 蒼い炎が一瞬燃え上がったようにガルンには感じた。 自分の憎悪に近い熱さを感じて目を細める。 精霊世界に片足を突っ込んでようやく理解した。 目の前の狼の存在の大きさを。 (でかい……それに、何て凄い光だ) 精霊界側から見る邪妖狼はまるで蒼い太陽のようだ。 目が眩むような神々しさがある。 《人間は自らの種の絶滅は願っていない。だが、その行為は世界の滅びを促している。死にたくは無いのに生きる環境を殺していく。矛盾した生き方が人間種の業だ》
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!