第二章 禍津日

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《今の卿なら精霊界側も見えるはずだ。全ての世界は調和と生命の循環で出来ている》 ガルンの視界がぼやけて行く。 今まで見ていた森と違う、別の世界が見え始めた。 (なんだ……これ?) まるで世界全てが水の中に埋没したようなイメージ。 そして、光揺らめく像が幾つも見える。 木々の位置に緑色の光の揺らぎを感じた。 生命力溢れたそれらが酷く怯えている。 怯えている理由が自分の体から溢れ出している、黒い煙りのような物だとようやく理解した。 目を凝らすと、どす黒いカエルの卵のような気持ち悪い触手の様に見える。 その触手が背後の緑の存在を搦め捕り、侵食し、食い散らかしているように感じた。 (こいつが……木を……いや、木の精霊を食べてる?) その行為に呼応して木々の命が、樹木自体が砕けているのだ。 《全ての物は等しく等価値の存在だ。生存の為に他者の命を奪うのも必然。逆に自らが食われるのも必然。全ての物に敬意を払い、奪った命は自らの血と肉となり、その自らの命すら他の者に還元される。それは星霊と言う一つの自然存在の中で行われる生命の循環だ》 「……食物連鎖だろ」
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