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「……人間は世界の敵って事? お前が言ってる事はよく分からないよ」
ガルンはそう言うと眉を寄せた。
しっかりしていると言っても十に満たない年齢だ。
《我は身勝手な人間ばかりではないと知っている。大多数の悪性を除去するために、数少ない良性を犠牲にする考えはない》
「……?」
疑問に眉を寄せる。
始めから理解しがたい内容に、とうとうついて行けなくなってきたのだ。
《しかし……今のお前は悪性そのものに、世界の歪みになりつつある》
「世界の歪み?」
《このままでは卿は悪霊として死ぬ事になるだろう。アポトーシスならばまだ良い。しかし、もし世界の敵となった時は……》
「……」
蒼い炎の濃度が――光輝が増す。
《我が卿を殺す。それだけは覚えておくがいい》
「命を助けたのに、今度は俺を殺す?」
ガルンはよろよろと木から離れる。
邪妖狼は微塵も動かない。
しかし、その身から溢れた鬼気がガルンを下がらせた。
《もし生き延びる事ができたのならば、その事を夢ユメ忘れるな。我が名はクフル。卿の死を見つめるモノだ》
そう言うと、蒼い狼は一声吠えると森の奥に走り去った。
まるで蒼い鬼火が消え去るように。
ガルンはその姿を茫然と見送ってからその場にへたりこんだ。
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