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何故僕は全力で走るんだ?
いつも歩き慣れたこの道を、何故今走っているんだ?
走ったって間に合うかすら解らないのに、何故僕は走るんだ?
あいつがああなるなんてわかってたんだ。
なのに何故僕は、そばにいなかった。
あの時の「ごめんね」が最後だなんて嫌だ。
そうだ、だから僕は走るんだ。
少しでも言葉を交わしたいから。
だからなんだ。
いつの間にか僕は、立ち止まっていた。
目の前にそびえ立つ建物は、音の鳴り止まない場所だ。
だけど、今一つの音が途絶えようとしている。
僕にその音を奏で続ける事は出来ない。
出来るのは指揮棒を振るう事だけだ。
その指揮棒を振るう為に、僕はある部屋へと入った。
そこにはいつもの様に、狂詩曲が流れるのではなく、虚しいペースメーカーがリズムを刻んでるだけだった。
「来たんだ」
「当たり前だろ」
僕は乱れた息を整えながら、彼女の隣にあった椅子に座った。
「私が死ぬとでも思った?」
いつも通り笑いながら彼女は僕をみた。
「連絡、あったからさ」
そうだ、僕は彼女の親から連絡があって病院に走ってきたんだったっけ。
「相当、焦ってたんだ」
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