第1話:古いアパート

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  『引越ししたから遊びに来いよ。かなりオンボロなアパートなんだけど、とにかく激安なんだぜ』 高校からの友人Cの誘いを断る理由もなく、私は引越し祝いの電子レンジと酒を買い、車で向かっていた。 『オンボロ』と言うからには築年数が古いのだろう。彼は特定の職に就いている訳ではないので、安い物件を探しに探したのだそうだ。しかし、収入がなくてこれからどうやって暮らしていくつもりだろうか……。一抹の不安を覚えながらも、車は無事にCの引越し先へと到着した。 「えっ!?こっ……ここ!?」 アパートを見るなり、私は言葉を失った。それもそのはず。オンボロなんてものじゃない。人が暮らせるレベルではないくらいに見事にボロボロなのだ。掘っ建て小屋の方が断然ましだろう。 木造2階建ての焦げ茶色のアパートは、“浦○鉄筋家族”に出てくる春○先生が住んでいるアパートに大型の地震が来た感じ。とにかく、人が生活するには困難なほど、ささくれ立った壁は更にひび割れていた。
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