竹春 桔梗と言う存在

2/22
192人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
   「それなら家にある。」     「え?マジで?」     俺は今月の購入書籍のリストを見るのを止めた。     「ああ。最近も見かけたから間違い無い。」      ソファーに腰を掛け、読みかけの本から目を離さずに奴は答えた。     「…………貸してやろうか?」      「へ?良いのかっ?!」     このチャンスを逃したら、絶対に見る事はできない!以前、この男は世界中の史書を所有していると聞いていて、雑談ついでに聞いてみた。それが、ビンゴ!普通なら、国宝物だ。     「じゃあ、取りに来い。」     奴はさっさと立ち上がり、ドアへと向かった。     「今からか?」     「……来るのか?来ないのか?」     俺は考える。確かに見たい。が。行っても大丈夫なのか俺。  俺が躊躇うには理由がある、奴は出会って間もない頃、身体を舐め回された。しかも理由が『甘い匂いがした。』らしい。危なく貞操の危機だった。     「待って。…………絶対に何もするなよ?」     奴は横目で俺を見ると、何も言わないで、ドアから出て行った。     「!!ちょっとまちやがれっっ!」     俺も慌て、コートを羽織り、奴の背中を追って行った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!