第1章 家系

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我が家は、遡れば王族の系譜に行き着く。 しかし、それは300年以上前の事。 現在の国王から、13代前の女王の弟だった人物、アタラ・ルイ・ル・メイが初代当主だ。 当主以降、婚姻等の王家との繋がりはない。 今となっては、間違っても王位継承に問題にされないほど遠い。 この『王弟』は病弱で、国政には耐えられないとして、生涯表に出ることなかった。 領主として、この地に封じられたのが始まりだ。 彼がどんな人物だったのか、現在では知る術は殆どない。 分っているのは、倉に眠る彼の『作品』から、武よりも芸。 特に舞を好んだらしい…という事。 それと、教会にある、彼をモデルにしたとされる天の使いの象がある。 ほぼ等身大のそれは、特別な石で彫られ、頬にうっすらと赤味がさし、まるで血のかよった生身の人間のような肌の色。 風に弄ばれる様に波打って踊る髪は、蜂蜜色。 やや面長だが、舞い上がった前髪から除く額は聡明さ窺わせ、眉は意思が強そうだ。 鼻筋が通りやや彫が深いが、伏せ目がちで柔らかな笑みを浮かべる唇は女性的な印象の面差し。
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