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―サク、サク。
雪で真っ白になった神社を進んで行く。
今日は12月31日、夜中。
あと少しで年が変わる。
「やっぱり寒いなぁ…」
私はぽつりと呟く。
近くに大きな神社があるのでこの神社には少ししか人がいない。
「ゆうちゃん!」
聞き慣れた名前を呼ばれ、声のした方を振り返る。
「あ、おじさん」
振り返るとにこにこしながらおじさんがやって来た。
おじさんはこの神社の神主さんである。優しくて奥さんラブな35歳。
ゆうちゃんとは私のあだ名で、本名は山下友奈(ヤマシタユウナ)という。
高校2年生だ。
「やっぱり来たんだね!陸君は…元気にしているかい?」
おじさんはちょっと気まずそうに聞いた。
「はい。うるさいくらい元気ですよ」
「そうか。そりゃ良かった。さぁ、そろそろ行かないと間に合わないよ」
おじさんはまたにこりと笑った。
「そうですね、じゃあ」
会釈をして、おじさんと別れた。
しばらく歩いて立ち入り禁止という紙が貼ってあるロープの前で止まる。
―サク…。
「誰?」
雪を踏む足音が聞こえて、振り返る。
しかし後ろには誰もいない。
「…?」
気のせいか。
そう思って私はロープを越えた。
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