2/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
―サク、サク。 雪で真っ白になった神社を進んで行く。 今日は12月31日、夜中。 あと少しで年が変わる。 「やっぱり寒いなぁ…」 私はぽつりと呟く。 近くに大きな神社があるのでこの神社には少ししか人がいない。 「ゆうちゃん!」 聞き慣れた名前を呼ばれ、声のした方を振り返る。 「あ、おじさん」 振り返るとにこにこしながらおじさんがやって来た。 おじさんはこの神社の神主さんである。優しくて奥さんラブな35歳。 ゆうちゃんとは私のあだ名で、本名は山下友奈(ヤマシタユウナ)という。 高校2年生だ。 「やっぱり来たんだね!陸君は…元気にしているかい?」 おじさんはちょっと気まずそうに聞いた。 「はい。うるさいくらい元気ですよ」 「そうか。そりゃ良かった。さぁ、そろそろ行かないと間に合わないよ」 おじさんはまたにこりと笑った。 「そうですね、じゃあ」 会釈をして、おじさんと別れた。 しばらく歩いて立ち入り禁止という紙が貼ってあるロープの前で止まる。 ―サク…。 「誰?」 雪を踏む足音が聞こえて、振り返る。 しかし後ろには誰もいない。 「…?」 気のせいか。 そう思って私はロープを越えた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!