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夜中なので真っ暗。
前が見えづらい。
「懐中電灯、持ってくればよかった…」
失敗したなあ。
でも早くしなきゃ…。
歩くペースを早める。
そして、神社の裏に来た。
「あった…」
私の目の前に立つ、大きな木。
元旦に花を咲かせる桜の木。
大切な約束を交した、大切な木。
「陸…」
冷たい樹皮にそっと触れる。
ここには来ない。
分かっていても望みを捨てられない。
陸は、私の彼氏だった。
でも陸はもう私の知っている陸じゃないんだ。
「山下…?」
「ん…」
振り返ると、懐中電灯の光で目が痛くなった。
「あ、ごめん」
懐中電灯を急いで下に下ろす…陸。
「何で…ここにいるの?」
来るはずがないのに…。
なんで?
「人混みは嫌いだから…この神社にきたんだ。そしたら山下がこっちに行くのを見つけて…さ。山下こそ何でこんな所に?」
「それは…」
言えるわけないじゃん。
「言っても…言っても陸は思い出さないじゃない!私との…」
思い出を…。
約束を。
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