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花火大会
漆黒の夜空に様々な花火が打ち上げられて花開く
温泉に入り、食事を終えた泉は部屋の窓からみえる花火を観賞していた。初めてみる花火に泉は視線を逸らさずに見ている。
その側では、浴衣を着込んだ晃司が猪口を唇に運んでいる。
白い陶器の肌に紺色の浴衣が似合っている。
最後の大花火が打ち上げられて消えていくと、辺りが静けさを取り戻すと、部屋の中が静まり返った。
「…………」
窓枠に両手を添えて、黙ったままで静かになった空を見上げる泉は、淋しそうな表情をしていた。
「花火終わったね…泉?」動かない泉の様子を見ていた晃司は、猪口を置いて声を掛けてみた。
「花火って、一瞬輝いて消えていくんだな…俺も何年かしたら…」
晃司の声が耳に入ると、泉は独り言を呟いた。花火のように輝いて消えていく存在になるのかと不安を抱いた。
「大丈夫だよ…」
背後から泉を抱き締め、丸くなった背中を長い腕の中に納めた。
「えっ、晃司…放せっ」
いつのまにか自分の背後から声が聞こえると、目を丸くして驚いた泉は抱き締められている腕を振り解こうとした。
「あんたは俺の側にいればいい…」
後ろから抱き締めて、泉の耳元に唇を寄せて低い声で囁き、真っ赤になった耳を唇で挟んだ。
「ぁ…待て…っ…晃…」
耳に響く低い声に体が熱を保ち始めると、声を洩らした。窓枠を掴む両手に力を込めて愛撫から逃れようと体を起こそうと膝を着いて膝立ちの体勢をとった。
「待たない…ヤリたい…」
腰を浮かせた体勢になると、晃司は泉の浴衣の襟から片手を差し入れて胸元を探り始めた。
「ヤメ…晃司待っ…あっ…」
真っ赤に染まった顔を左右に振って抵抗する泉は、晃司の手を止めようとしたが、その前に胸の固く起き上がってしまった突起を指に摘まれてしまい、声を洩らした。
「立ってるよ…タクト…」そこが敏感だと知っている晃司は、指先で遊ぶ。
そして、普段は呼ばない下の名前を耳元に囁く。
「ソコ…嫌っ…だ…」
胸から沸き起こる痺れに泉は戸惑いながらも堪えている。晃司の腕の中から逃げようとしてみた。しかし、自分より逞しい腕に適うはずもなく、されるがままの姿が脳裏に浮かんだ。
「こっち向いて…全部見せてっ」
背を向けたままの泉に声をかけて、晃司は両手で腕の中にいる泉を振り向かせる。
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