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漆黒の闇に赤い花が散る。
散るたびに人間が倒れる。
ただ、刃の放つ冷たい光だけを頼りに緋を散らしていた。
「灼景っ」
仲間の男の後ろにギラリと光る刃を見つけて、そこ目掛けて灯凪は躊躇わず仲間に短刀を投げる。
見透かしたかのように短刀を避けた灼景の後ろに潜んでいた敵は断末魔をあげて倒れた。
それが合図のように敵は去った。
後には刀傷に呻く怪我人ともう口を開くこともない殺された者ばかりだ。
「任務、終了だ」
肩を叩かれてふと我に返った灯凪は、振り上げていた刀をゆっくりと下ろす。その下ではいつ命を絶たれるかと震えていた男が泡を噴いて気を失った。
「あぁ……」
その男の着物で血の付いた刀を拭い、鞘にしまった灯凪は傍の木の下に座り込む。
疲れたわけではない。
このくらいで疲れてしまうのなら元よりこのような仕事はしていない。
「灯凪、大丈夫なのか?怪我はないか?」
案じる声に大きく頷いて笑うと、つられたように灼景も笑った。
「案外、簡単だったな……。この仕事は」
「あぁ、野党から身を守るための見張り番だったからな」
灯凪は長い黒髪を縛っていた結い紐を解き、紅い櫛を取り出した。
梳くたびに艶を増す髪に見とれていた灼景はふと洩らす。
「きれい、だな……」
「ん?……なにが?」
真顔で聞き返されて灼景は迷う。正直に言おうか、と。
しかし、勝手に口が開く。
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