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地平線から顔を出した太陽が大地を照らし出す。
朝もやのかかった大きな城がキラキラと輝いた。
小鳥の囀りが響く中、一際大きな声が城に響いた。
「オギヤァオギヤァ」
元気な赤子の声が響く城内。
赤い絨毯の廊下を急ぎ足で進む20代の男性。
いや、もう走っていると言ってもいいのかもしれない。
紅蓮の短髪の髪。
高そうな服に身を包み、背には髪と同じ紅蓮のマントが靡く。
その顔はどこか安堵したようで、それでいて嬉しそうだった。
暫く走り、男性は重厚な木製の扉の前に立つ。
そして勢いよく押し開けた。
「産まれたのか?」
はやる気持ちを抑え、男性は落ち着いた声で尋ねた。
侍女だろうか?
部屋の中にいた足首まである黒いワンピースのような服に、白いエプロンのようなものを腰にまいた女性が笑顔で頷く。
「はいバドラス様。元気な男の子ですよ」
侍女の言葉にバドラスと呼ばれた男性は途端に笑顔になる。
そして足早にキングサイズのベッドに近付く。
「あなた」
「よく頑張ったなメリル」
仰向けに身を寝かしている黒髪の女性にバドラスは笑顔でそう言った。
そんなバドラスの言葉にメリルと呼ばれた女性は笑顔で頷くと、抱いていた赤子がバドラスによく見えるようずらす。
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