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 にぎやかなナツを通り過ぎて、さらに僕は歩き続けた。歩くうちに緑一色だった木々の間に赤色、黄色が混ざり、その先は濃い赤色に支配されていた。  赤色の葉のいくつかは木から離れ、これからの道を染めている。熱気を帯びたにぎやかな音は聞こえなくなり、代わりに静けさを感じさせる、矛盾したような音が辺りに満ちはじめた。  そして立ち並んだ木々が途切れ、道が開けた。なだらかな丘、底の見える川、その落ち着いた空間で、人々は思い思いのことをしている。  その中の、赤く色づいた葉を揺らす大木に背を預け、遠くを眺めている男に僕は声をかけた。  「ここはなんと言うところですか?」  男はふと見上げた顔を、元の向きに戻しながら、ゆっくりと答えた。  「ここは秋だよ。」  「アキ、ですか。」  「そう、夏でも冬でもない、秋さ。……君はどこから?」  「僕は、春から…。」  「ほぅ。随分と遠くから来たんだな。それではここは面白いだろう、何せ春とは正反対だ。」  「そうですか?僕は似ていると思いましたが……。」  「そうかな?…ふふっ、ではいろいろと見て回ると良い。どれだけ違うかよく分かる。」  気温は肌に心地よく、落ち着いた雰囲気を持つアキは、やっぱり春に似ていると思った。でも、本当に違いがあるのなら、その違いに気づかないまま旅を続けるわけにはいかない。  僕は男の言うとおり、アキを回ってみることにした。それにもともと、人の集まる場所には、少しとどまろうとも思っていたのだ。
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