天狗の子

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 僕らの住んでいる街には、通りに面した大きな映画館があって、その裏側にある路地のうちの一つが僕たちの遊び場だった。  僕たちは、晴れの日はいつもそこでベイゴマをしていた。大通りでベイゴマをやらないというのは暗黙の了解だ。ガキ大将だった僕は当然ベイゴマも一番強かった。  その路地の二つ隣の路地の奥に、天狗が住み着いた、という噂が流れたのは、もう二週間も前の話だ。  噂が流れてすぐのころは、肝試しの場所を墓地から変更して行ったりもしたが、結局何も起こらなかった。今はもうその噂の話をするものなど一人もおらず、みんな元通りベイゴマに熱中していた。
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