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わ。
うわああ。
どうしよう。
嬉しい。
桃香は自ずと緩む顔を悟られないように、慌てて助手席に乗り込んだ。
すぐに車を発進させて、裏門から出るケイ。
桃香はケイの指示でしばらくシートを倒して隠れた。
おしゃれなBGMでも、流行りのJポップでもなく、車内に流れるのはNHKラジオ。
桃香はなんだかケイらしいな、と思った。
体を傾けながらも運転するケイの横顔を見る。
ケイの後ろでキラキラと流れて行く景色。
ケイの眼鏡や寝癖の付いた髪や真っ直ぐ前を見る目を、いろんな色に変えていく。
運転する男の人って、……なんでこんなにカッコよく見えるんだろう。
桃香は、お父さんや親戚以外で初めて乗る男の人の車に、いや運転する人にドキドキが止まらなかった。
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