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「どこ?」
「え?」
当たり前だが前を向いたまま、ケイが声をかける。
「家」
「……。
えっと……」
正直言って徒歩15分の距離だから、車だと5分もかからずに着いてしまう。
せっかく正真正銘の2人きり。
もっと話がしたい、というただの自分の我儘が、桃香の我慢する気持ちを後ろからぐいぐい押そうとする。
「夜景か噴水が見たいです」
「ああ?」
ドスの効いたケイの声。
「嘘です。
緑ヶ丘公園のすぐ隣です」
「……」
それはそれは、すぐだった。
ろくな話もできぬまま、緑ヶ丘公園の2台くらいしか停められない小さな駐車場に着いた。
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