ゼブラ ―雨男―

可奈

公衆電話は奥のトイレにつながる廊下にあった。

壁があるので客席からは死角になる。

可奈は不審さを隠せずにとりあえず公衆電話に向かった。

いじっていた携帯は置いてある。

私はそれを確認するとすぐに可奈の携帯を取り、自分の携帯に空メールを送った。

送信履歴をすぐに消して、太田実からの受信内容を流し見てから、何通かを赤外線で自分の携帯に送信する。

あまり甘い会話はしているようには見えなかったが、今は気にしてられない。

そして可奈を装って太田に、太田を装って可奈にメールをする。

携帯を変えたのでこのアドレスを登録するようにと促す内容だ。

奥の廊下に視線をやるが、まだ可奈は出て来ない。

履歴削除の確認をして、可奈の携帯を置こうとした時だった。

いきなり手首を掴まれた。