・・プロローグ・・

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わくわくするんだ。 いっつもわくわする。 この白く広大なパノラマは、 沢山のドキドキをくれる。 私ね、 冬が大好き。 しんとした空気、 青い空、 陽を跳ね返す白い斜面は とってもとっても眩しくて……。 雪の中、 スノーボードは魔法をかける。 自由に泳ぐイルカのように、 小さく大きく弧を描きながら滑り降りる私達を、 真っ白い綿みたいな帽子とショールを身につけた常緑樹達が、静かに微笑んで見つめるの。 緑の枝が重そうに傾いて、 帽子とショールが落ちる。 地球の引力が脱がすんだ。 ドッ……、バサッ……。 きっと、白い世界にこだましてるね。 凍てつく風に晒される 頬が痛いよ。 「はぁ……っ」 息をすれば白い湯気、 鼻を通る空気も凍る。 あぁ、でも大好き。 風を切るスピードがたまらない。 冷たく柔らかい、 ふっかふかの雪は 気持ち良いよ。 最高だね。 ホントに最高。 雪に恋してる? そう思ってた。 あの時まで。 ゴーグルを ニット帽の上にのせ、 目を細めながら 空を見上げた私は、 恋色に染まった。 空に向かって、 高く高く飛んだ君。 青とひとつになった君が、とても、とても、 綺麗で 美しかった。                  
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