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「勝手に、人の荷物を開けようとすんな。それに、あの時作ったのは飲み薬だ。意識が無い相手に使うなよ」
青年は、そう言うと余裕の笑みを浮かべてみせた。しかし、彼は横たわったまま起き上がろうとせず、横臥姿勢のまま言葉を続ける。
「それとも何か? 片っ端から口移しで飲ませてくれるのか?」
その話を聞いたベネットは溜め息を吐き、立ち上がって首を振った。
「さあな。だが、気が付いたなら、その必要もあるまい」
淡々と返すと、ベネットは青年の荷物を掴み、彼の眼前に置く。
「貴様の言う通り、私は薬に詳しくない。だから、自分で選んで回復しろ」
この時、ダームは驚いた様子でべネットの顔を見上げた。しかし、彼女の表情に悪意はなく、少年は小さく息を吐く。
「生憎、効きそうな薬がねえんだよなあ」
そう言って笑うと、青年はゆっくりながらも起き上がった。そして、体の状態を確かめるように肩を回すと、腰に手を当てる。その後、彼は腰に手を当てたまま上体を捻り、何度かそうした後で背中を反らせた。ダームとベネットは彼の動きを無言で見つめ、ザウバーは腰から手を離して開閉させる。
「とりあえず、おかしなところは無いみてえだ」
青年は、そう言って目を瞑り、大きく息を吸い込んだ。
「後は……力を試してみねえとな」
そう言うなり、ザウバーは呪文を唱え始めた。そして、その詠唱が終わった時、三人の体は褐色の光に包まれる。そのせいか、ダームは眩しそうに目を瞑り、その光が収まったところで目を開いた。
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